2015年11月17日火曜日

巷にあふれる「セミナー・勉強会」に思うこと

 顧問の牛島です。最近はFacebookTwitterなどSNSの発展で、そこでつながる学生たちの日々の出来事がよく見えるようになりました。「あ~彼はこんなところでバイトしているのか」とか「今こういうことに興味をもっているのだな」というような事が、こちらから尋ねなくても知ることができるのですね、便利な世の中になったものです。

で、そんな中最近よく目につくのが「~セミナーに参加しました」という投稿です。私が柔道整復の専門学校に通っている時もよく「学校で学べることなど、国家試験に合格するための知識でしかなくて、臨床の現場ではそれじゃあ全く足りない」から学校の外で開かれる勉強会に出席すべし、というような空気がありました。今はそれに加えて「就職のためのネットワークづくりになるから」というのも学外で行われる様々なセミナー参加への動機になっているみたいです。

確かに我々養成教育を行う側としては、卒業と同時に行われるそれぞれの資格の国家試験に合格してほしい、そのあまりに試験範囲から逸脱したものをあまり吹き込みたくない、というのがあるのかもしれませんし、学校によってはそのカリキュラムが設置基準の最低限しか満たしていないところもあることは事実です。そういう学校に通っているのなら、ある程度仕方ないところかな、とは思いますが…ウチは違う。1902コマ、それを3年で取れる資格を、1904コマ、それも4年かけて取らせようというのですから、それなりに充実している…はずなんです。


先日、こんなものまでセミナーになるのか、と驚いたものがありました。そこで話される内容は「就職のためのネットワークづくり」に役立つとはいえ、学生が部活動などの課外活動やアルバイト先での体験を通じて「身につける」ものであり、誰かに教えてもらって「知識にする」だけでは不十分なものです。しかもそれを話す講師はある別のところで、学生時代の思い出として、企業から過剰な接待を受け、リクルートされたことを自慢している。それからそんなに経たない今はそうした大きな企業に属しているわけではない。それどころか同じ主催者による別のセミナーでは、同じその講師がバイオメカニクス的かつ、外傷の評価法を含む内容を講演するようなのですが、厚生労働大臣が発行する医療職免許があるわけでもなく、大学院などでバイオメカニクスを専門に勉強したという背景もない。そんなに参加費は高いわけではないのですが、単にこの講師は学生からお金を集めることが目的ではないかと疑わざるを得ず、それらのセミナー内容も信憑性ははなはだ低い、と冷静に考えれば予測できるはずなんです。

4年制大学の学生であれば、レポート課題を出されたときに、末尾に参考文献の一覧をつけるようにと指示されるだけでなく、参考になる文献の見分け方も教わっているはずですから、それらの話をできる講師、とはどういう背景をもっていてしかるべきか判断がつくと思います。でも、どうやらそれが判断できなくなっている学生が多くいるようで…


先日はある医療職免許保有者、それもまだ非常にお若い方がセミナーを開催しており(ある志のもと無料で開催していたので良心的だともいえるのですが)、その宣伝文句の中に、

「私が今回お話する内容にかけてきた自己投資額は、およそ50万円。鍛錬の時間は500時間を超えますから、セミナーの金額はそれ相応です。それを今回は無料で…」

というのがありました。私も年に何度かテーピング講習会など、各種セミナーの講師を担当させていただくのですが、同じように表現するなら

「95年に柔道整復師免許を取得後、98年よりアメリカの大学に留学して身に付けた技術で、2002年の資格取得まで(自己投資額?計算したくありません…笑)の3000時間を超える現場経験のうち、1/7~1/6の時間はこれを行い、資格取得後はこの技術を臨床で用いるだけでなく後進にも指導をしつつ13年、鍛錬の期間を含めると17年目を迎えます…」

とでも書けばいいのでしょうか。どの世界でもある程度そこにいると、上には上がいると知って、そんなことを普通書こうとは思わない(今回はあえて恥を忍んで書いているのですが)、というか自分より知識や技術、経験で勝る人が見ているかもしれないと思うと書けない。でも、伝えようとする技術に関してそれなりの経験がある。経験があるからこそ、うかつにそう言えなくなる…「実るほど頭を垂れる稲穂かな」ですね。今回私はこうやって書いてしまったので、まだまだ発展途上でしかない治療家だと馬脚を現してしまったのですが…。

 私がカリキュラムに取り入れて指導している技術の中には他の学校だと学外のセミナーに参加しないと学べないものも含まれていますが、うちの学生にとっては学校の必修科目に含まれている、という時点でありがたみが薄いのかもしれません、きっとよその学校でも同じような講義があるんだろう、と。私にかぎらず、今いる学校で教鞭をとる先生方にはそれぞれ口には出さないけれども「これだけは誰にも負けない」技術や知識、あるいは経験があるはずです、だから教えることをフルタイムの仕事にできている。学外のセミナーで見聞を広める事は悪いことではありませんが、まず身近にいる人から吸収できるものを吸収して、それでも足りないと思われるものを外に求めても遅くはないと思います。「学校では教えてもらえない事」のうちの多くは、ほんとは今いるところの近くにあるかもしれません、「灯台もと暗し」とも言いますからね。

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